着物の仕立て
重陽の節句 大輪の菊の着物を仕立てました
秋に香る菊の花 秋の訪れが感じられる様になると季節を代表する名花、菊文様の着物に心引かれます。
菊は、薬の力を持つ花と言われ、日本には奈良時代から平安時代にかけて、中国より渡来しました。菊の姿、色、香りが優れているので、絵画、工芸品の模様に取り入れられています。陰暦、九月九日の重陽の節句には、菊の露と香りを移した菊のきせ綿で体をぬぐって、延命長寿を願う行事があります。 秋の花の代表ですが、文様では古典文様の吉祥文様として広く好まれ、着物の柄にも、季節を問わず多用されています。
今回の菊の着物は『美しい』だけの言葉では言いあらわせないぐらいの大輪の菊。隠れ地に菊水文様をあしらい。黄色味ある茶色。榛色(ハリイロ)と白色のコントラストの印象の場が強い、手描き加賀友禅染めの総模様の訪問着です。菊のデッサンを基に描かれた菊模様は、重厚な大輪の菊の花とは対照的な、脆さ(モロサ)を感じる細長い茎、互いのバランスが不安定な美を表現して、見る人に不思議な印象を持たせます。
今回の仕立てについてですが、気を付けたところは、少し身巾の広い方でしたので、色と柄合わせに注意しました。ハッキリとした、大胆な柄と反対色のため、柄がズレると目立ってしまうので、出来るだけ柄ズレを最小限に仕立てました。