着物の仕立て
お仕立て事例 - 紗合わせ裾引き裾綿仕立て
舞台衣装は、特別な仕立て方ですが、今回は、その中でも、大変難しい特殊仕立てになります。紗合わせ裾引き裾綿仕立てと言います。
紗の生地とは、隣り合う2本の縦糸を左右交互に入れ替えながら、緯糸に絡ませる事で、透き間を作った夏用の織物です。余談ですが、他にも、同じ様な薄い織物に『羅』、『絽』があります。今回の『紗』は、その中で、最も単純な織り方の織物です。
今回は、その紗の生地を2反と下着の比翼地を縹色(ハナダイロ)と江戸紫色(エドムラサキイロ)に、別染めしてからの仕立てになります。
縹色は、藍色(アイイロ)より薄く、浅葱色(アサギイロ)より、濃い色の事です。江戸紫色は、青み掛かった紫色の事です。
紗合わせの仕立て自体が、大変難しい特殊仕立てなのに、それに加えて、裾引きの仕立ても難しく、高度な技術を要します。
紗合わせ着物には、本来ならば、袖口布は付けませんが、今回の紗合わせ着物には、お客様の希望により、袖口布を付けています。
そして、役柄の為に袖には、袖の丸みも無しの大名袖にして、仕立てております。衿はバチ衿で、これも特別な広バチ衿で、広バチ衿と裾フキ綿とのバランスを取る為に、衿肩回りは1寸5分、衽下がり(オクミサガリ)は2寸、衿先は3寸にし、見た目が豪快に見える様にバチ衿の衿先の巾を広くし、仕立てています。江戸紫色の表地と比翼地共に綿が入っています。裾の褄のカーブは型紙を作って、裾フキの褄先を綺麗に仕立てています。
比翼部分の綿の量は、表地の綿よりも、多く入れて重量感がある様にしています。裾綿が安定する様に表地と比翼の両方に工夫をして仕立てています。紗合わせの為、裾のフキの絎け目(クケメ)に気を付け、本体の下に比翼のフキが出る為に、綿の厚み分を 前巾、後巾より控え、出来上がりは、本体とフキが揃う様にしています。