着物の仕立てと仕立て直し伊藤和裁

着物の仕立て

正倉院文様の訪問着の仕立て


真のマボロシの文様、正倉院文様の訪問着を仕立てました。
奈良県にある東大寺、その敷地内にある宝物殿の正倉院には、千年以上前に当時の世界中の国々から、当時の天皇、聖武天皇へ贈られて来た超一級品の品々が今もなお存在しています。その品々に描かれているデザインを着物の文様に取り入れたのが、今回の訪問着になります。
千年以上前のデザインが、普通なら実在しない「まぼろし」のデザインなのに、令和の現在においても、現代のデザインにも遜色なく、「普通」に使われ、愛好されている。これこそ、真の『まぼろし』の文様です。

この訪問着に使われている正倉院文様は、華文文様と唐草文様です。華文文様は、当時の日本在来の華麗な花達の総称の形を日本人のアレンジで具現化したデザインです。唐草文様は、蔓草か(ツルクサ)の蔓や葉が絡み合った曲線をデザインしたものです。その絡み合った様が末永く繋がり、未来永劫に続くものと考え、吉祥文様になりました。

今回の訪問着は友禅染めで作った着物です。
生地は、綸子の光沢が美しい丹波ちりめん。場の地色は、大変、上品な藤袴色(フジハカマイロ)。肩裾上前身頃褄(カタスソウワマエミゴロツマ)には、ぼかしながら、空色(ソライロ)へと変わります。春らしい色合いです。柄付けは、肩裾模様(カタスソモヨウ)と島原褄模様(シマバラツマモヨウ)の組み合わせ模様です。華文文様は輪郭を金彩で彩り、その廻り、そして、その他の着物全体を唐草文様が描かれています。格調の高い柄ゆき、その幻想的な色彩で表された文様は、この着物にそこはかとない華やぎを漂わせています。

今回の仕立てについてですが、着物全体のぼかしと細かい柄付けに注意しました。蔓や葉、花などの細かい柄で、蔓の部分は、柄がズレるとバランスが悪くなるので、きっちりと柄合わせをしています。お客様の寸法によっては、柄がきっちりと合わない事がありますが、その場合は、脇の柄合わせで調整します。正倉院文様の格調高い唐草文様と唐草文様をモチーフにした異国情緒漂う幻想的な訪問着を仕立てました。

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