着物の仕立てと仕立て直し伊藤和裁

仕立て直し

風景文様の紋入り訪問着の仕立て直し


昔きものの訪問着を仕立て直しました。背中に一つ、両袖の後ろに二つ、家紋が入っています。
紋の名前は、『下り藤(サガリフジ)』と言います。フジモンの発生の原点は、苗字をデザインして、その家のシンポライズする印なので、藤原氏を表すことが本旨(ホンシ)です。藤紋のうち、八割近くが、『下り藤』で占められています。
紋の入れ方は、縫い紋で、線須賀縫いで刺繍しています。表地の地色は、『チリアンパープル』、古代ギリシャやローマ時代に、貝殻から採取して、染料にしました。お預かりしたときは、この表地が色あせていて、目引き染めという方法を使い、着物の模様を染まらない様に糊伏せし、地色だけを染め直しました。その模様についてですが、風景文様といいます。遠景には、不老不死の仙人が住んでいると伝えられる『蓬莱山(ホウライサン)』、麓には、天境の世界を表した建物、『楼閣(ロウカク)』があり、幸福を運んで来たり、天や祖霊の間を行き交う、『鶴(ツル)』が美しく舞っています。(着物の上前身頃、左袖前、両後身頃裾に鶴が描かれています。)
この着物の裏地の八掛け、胴裏も変色や汚れが酷く、新品の物に取り替えて、表地を全て解き、ハヌイをして、反物の形に戻し、湯のし、洗い張り、目引き染め、そして、お客様の現在のサイズに仕立て直しました。

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